施工事例
works
築20年RC4階建て屋上の劣化した防水断熱層を交換 大阪市住吉区
2017.04.19
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今回は『大阪市住吉区の築20年RC4階建て屋上の劣化した断熱防水層を交換した事例』です。
大阪市住吉区にRC4階建てのビルをお持ちのU様から「ビルを建ててから一度も防水の取替えをしていなかったので交換してほしい。」とホームページよりご依頼いただきました。
U様のビルの4階部分は住居として使用されており、以前からその天井の雨漏りが気になっていたそうです。
建物は築20年で、建てられてから一度も防水層の交換を行っておらず、当時の業者さんからは「防水層の下に断熱材が入っているから、交換するときは両方交換してください。」と言われていたそうです。
防水ゴムシートの耐用年数は10~20年
屋上防水などに良く使用されている防水ゴムシートは使用状況によりますがだいたい10年から、長くて20年程度しか持ちません。
U様のビルの屋上は表面のシルバーの塗装がはげて黒いゴムが見える状態になっていました。
またシートの端の処理も金具を外から取り付けるタイプのものが使用されており、シーリングも含めて劣化が目立ちました。
住居の屋上に多い防水断熱層
最上階が住居の場合、外気の影響を軽減し快適に過ごせるように、屋上の防水層の下に断熱材が入っている事が多いです。
断熱材は、熱を伝えにくい、空気を多く含んだポリスチレン製のものが一般的です。この素材は防水層が劣化して水がしみこんでしまったとき、スポンジのように水を蓄え、コンクリートの劣化、さらには内部の鉄筋の劣化の原因にもなり得ます。
夜間、人間が生活しない事業所などの屋上なら直接防水加工が施されていることが多く取替えや補修が比較的簡単ですが、断熱材が入っている断熱防水層は2つの層をはがして、またとりつけることになるので工事が大掛かりになります。
パラペット部防水処理後、既存防水シートと断熱材をすべて交換
まずパラペット部(屋上の立ち上がり部分の先端)の防水処理を行った後、既存のゴムシートを端の金具からはがし、その下のポリスチレン製断熱材もすべて捲りました。床の汚れを清掃したあと、新しい断熱材を敷き詰め固定し、上から塩ビシートを通気性がよくなる方法で取り付けました。防水がより長持ちするよう継ぎ目などの細部までていねいにシーリングを行いました。
基本情報
- 費用
- 約100万円
- 工期
- 約2週間 約30人工
施工内容
- パラペット部へのウレタン防水加工
- 既存シート金物の除去
- 既存防水層を捲る
- 清掃
- 新しい断熱材の設置
- 鋼板取り付け
- ドレーンの取り付け
- ディスク取り付け
- IHヒーターでディスクに塩ビシートを接着
- 脱気筒の取り付け
- 立ち上げ部を溶着材で接着
- パラペット取り合い部へシーリング処理
- 出隅部と入隅部のパッチ処理
- 塩ビシートジョイント部専用シーリング処理
今回の防水断熱工法の工程
1.パラペット部へのウレタン防水加工
まずパラペット部にウレタン防水加工を施します。
この作業を最初に行う理由は、パラペットの下は後で剥がしてしまう古い防水シートなので、汚れても問題がなく、養生する必要がないため手間が省けるからです。
2.既存シート金物の除去
防水ゴムシートをパラペットの下に固定していた金物を取り除きます。
ネジが錆びておりドライバーではずすことができない状態だったので、シート金物ごとバールではがしました。
劣化がひどかったシーリングもきれいにはがします。
3.既存防水層を捲る
表面のゴムシートと、内部のポリスチレン製断熱材をはがしていきます。
防水シートが劣化していた部分の断熱材は水を吸ってスポンジのようになっていました。
防水層を捲くった後の、赤い汚れは接着剤の跡です。
4.清掃
接着剤の跡や、残ったポリスチレン断熱材をスクレーパーなどで丁寧に取り除いたあと、ほうきでチリを集め、屋上全体をきれいにします。
5.新しい断熱材の設置
新しい断熱材は以前より硬度の高いポリスチレン製で、さらに上下の表面に水を通さない板が貼ってある防水性高いものを用意しました。
6.鋼板取り付け
以前はシートの上から押さえる取り合い金物を使用していましたが、今回は上からシートをかぶせて固定する鋼板を使用するため、先に取り付けます。
立ち上がり部分との角に合わせ、断熱材の上から、床部分までネジを貫通させます。
7.ドレーンの取り付け
既存の排水溝を補強する、塩ビ製の改修ドレーンを取り付けます。ドレーンの先端は蛇腹構造になっており、曲がった配水管にもフィットします。
8.ディスク取り付け
断熱材の上に塩ビシートを取り付けるためのステンレス製ディスクを取り付けます。取り付けネジを鋼板と同様床まで貫通させます。
なぜ、ディスクを使用するのか、どのようにディスクにシートを取り付けるかは次で説明します。
9.IHヒーターでディスクに塩ビシートを接着
専用のIHヒーターでディスクに塩ビシートをかぶせ、熱でディスクに接着します。なぜディスクを使用するかというと、通気性が良くなるからです。
接着剤で全面を固定するのではなく、間隔のあいたディスクで屋上底面とポリスチレン板、ポリスチレン板と塩ビシートを部分的に固定することで、通気性が保たれます。
10.脱気筒の取り付け
防水層の通気性をさらによくするため、脱気筒を取り付けます。大きさは直径20cm程度です。
ディスクにかぶらない位置の2箇所に取り付けました。
11.立ち上げ部を溶着材で接着
立ち上がり部分に取り付けた鋼板に、塩ビシートの端を接着します。
溶着材でシートを溶かして直接鋼板に固定していくことで、金物の劣化を防ぐことができ、シートの端部分の防水が長持ちします。
12.パラペット取り合い部へシーリング処理
鋼板に接着した塩ビシートの端と、パラペットの間の部分をシーリングします。
13.出隅部と入隅部のパッチ処理
立ち上がりの角の三辺が交わる部分はシートが重なり隙間ができやすくなっています。
さらに水が角をつたって流れたりたまったりしやすくなっているので劣化し、浸水しやすい部分といえます。
なので、この部分を専用の塩ビシートのパッチで補強します。
14.塩ビシートジョイント部専用シーリング処理
塩ビシートの継ぎ目の段差をシーリング処理します。
広い面積を防水シートで覆う場合、どうしても継ぎ目の段差ができてしまいます。
この部分から雨水がしみこむ可能性があるのでしっかりとシーリングしておきます。
まとめ
長時間雨風や日光に晒される屋上は、防水層が劣化しやすく、雨漏りの原因になりやすい部分です。
さらに階下が住居の場合、断熱材が入っていることが多く、そこに水がしみこむと建物内部の劣化にもつながります。
防水層の劣化は、実際に雨漏りしてしまってはじめて気付くこともありますが、できれば「建物を建ててから補修したかどうか」、「最後にいつ防水層を取り替えたか」を思い出して、20年近く経っているなら一度状態を確認し、必要な処置を施すことで雨漏りを防ぐことができます。
今回のように、「ゴムシートの表面の塗装が剥げている」、「立ち上がり部分の金物とシーリングが劣化している」などお客様の目視でも確認できる点はありますが、詳しい状況や必要な処置の判断はプロの防水業者に任せていただくことをお勧めしております。
今回交換した新しい防水断熱層は、浸水しにくいポリスチレン製断熱材とゴムより丈夫な塩ビ製防水シートを用い、通気性が良くなる工法で取り付けたものです。
U様も「これなら長持ちしそうで安心です!」と喜んでいらっしゃいました。
大阪市住吉区の屋上の防水断熱層の交換はヤマナミへ